ジェノヴァ(ジェノバ)と聞いて、まず一般的には「バジルの風味が香るジェノヴェーゼパスタ」を思い浮かべ、歴男・歴女であれば「ジェノヴァ出身のコロンブスが新大陸アメリカを発見した」ことを連想されるであろう。
ヴェネツィア、ピサ、アマルフィと並び、古くからジェノヴァは中世イタリアの四大海洋都市の1つとして地中海貿易で発展したが、その歴史は今日も脈々と息づいている。桟橋の水深が8mという好条件に基づき、大型のコンテナ船・クルーズ客船の行き交う港湾施設が、22㎞以上の海岸線を占め、そこで扱われる貿易量は、年間6800万トン(2019年のデータ)を優に超える。日本へ輸出されるスーパーヨットの大半も、実際ジェノヴァで輸送船に積まれるのだ。
ジェノヴァは港湾事業と造船業の中心地
船舶に精通する諸氏にとって記憶に新しい、トスカーナ諸島のジリオ島で、2012年1月に座礁したコスタ・コンコルディア号。横転した巨大な船体の両舷に浮き箱を接合し、そこへ注入した海水の重みを利用して船体を引き起こした後、ジェノヴァ港まで曳航。約3年の歳月を経て、2017年7月に解体が完了した。この様な大工事の舞台にジェノヴァが選ばれたのは、ここが造船業の中心地で、屈強の男達が集まるからだ。それを象徴するかのように、ジェノヴァのボートショーは、相次いで中止されたカンヌやモナコとは一線を画し、Covid-19に屈することなく実施され、今年2020年に第60回目を迎えた。
リヴィエラ海岸:南仏ニースから連なる高級リゾートエリア
平地が少なく山がちなリグーリア州は、南仏ニースから弓なりに連なる高級リゾート地、リヴィエラ海岸を形成する。塩害で建物のファサードがとても傷みやすく、頻繁に修復を余儀なくされる風土に対し、沿岸から見てもわが故郷が美しく際立つようジェノヴァ人達は、より安価で容易な対策として、色鮮やかな塗装と、フランス語で「トロンプルイユ」と称する、目の錯覚を利用した壁画装飾を好んで取り入れた。そのため、街は明るくエレガントな様相を呈している。世間にあまり知られていない逸話に、ディズニーシー開園の折、ジェノヴァの壁画職人の一団が来日して、同じ技法でディズニーシーの建物を装飾した事実がある。
「ジェノヴァを拠点にする」という選択肢
①優秀なスーパーヨットビルダー、ヨットデザイン事務所が集中する。②ジェノヴァ空港と隣接する、便利なマリーナがある。③ジェノヴァから日本へ、スーパーヨットの輸送船が出る。
たとえば、スーパーヨットの購入を検討している場合、ジェノヴァや近隣都市のビルダーを色々訪問した後、リヴィエラ海岸の高級リゾート地でゆっくり過ごしてから、ジェノヴァ空港を経由して日本へ帰国する、という計画が考えられる。またイタリアのビルダーからスーパーヨットを受領する時が来れば、完成したばかりのオーナーズヨットを地中海で満喫すべく南仏、コルシカ島、サルデーニャ島などで、ゆっくりヴァカンスを楽しんだ後、スーパーヨットをジェノヴァから日本へ輸送することができる。
マリーナ・ディ・ジェノヴァ Marina di Genova は、その豊富な収容数もさることながら、空港に隣接というのが功を奏し、メガヨットをあらかじめ係留させておいて、オーナーやゲスト達は、好きな時にプライベートジェットでジェノヴァ空港に降り乗船する、というパターンが多く見られる。マリーナスタッフの心温まるおもてなしは、企画されるイベント内容やその画像に垣間見ることができるが…実は、筆者の勤務先が度々イベントを協賛しているため、筆者も足繁くこのマリーナに通っており、スタッフの親しみやすさについて、自信を持って保証する。そしてさらに嬉しい点は、近隣のマリーナよりも係留費が割安なのだ!
世界のセレブと同じように、ジェノヴァを拠点に、オーナーズヨットへ乗り込む、そんな粋な過ごし方を考える頃かもしれない。