スーパーヨットの船名学|Superyacht Nameology|#4 ― 名は体を表す。海の上の美意識と規範 ―
スーパーヨットの船名は、オーナーの個性や美学を反映できる自由度の高い要素と思われがちです。しかし、実際には明確な制約が存在し、国際法や登録国の規則に従わなければなりません。
船名は単なる装飾ではなく、船の識別や安全性、社会的責任にも直結する重要な情報
緊急信号と紛らわしい名称は禁止
船名として使用できない文字列には、緊急信号や航行に混乱をもたらす恐れのあるものがあります。たとえば「SOS」や「MAYDAY」といった名称は、国際的な緊急通信で使用されるため、船名として登録することはできません。もしこうした名称を船名に使用した場合、緊急時に混乱を招く危険性があるため、登録時に拒否されます。
政治的・宗教的に冒涜的または挑発的な表現は禁止
船名は社会的な文脈の中で受け止められます。政治的・宗教的に敏感な表現は、特定の国や地域で不快感や衝突を招く可能性があるため禁止されています。
共産主義や社会主義を示唆する言葉であり、特定の政治思想を連想させるため、多くの登録国で承認されません。
イスラム圏では、預言者ムハンマドに関する表現の私的使用は不敬とされます。スーパーヨットの名前として使用すると、宗教的に冒涜的と見なされる恐れがあります。
公序良俗に反する表現として、ほとんどの登録国で明確に禁止されます。
このように、宗教や政治に関わる表現は、船名の自由度を大きく制限する要素となっています。
登録済みの船名との重複禁止
同じ船名が複数存在すると、海上での識別が困難になります。そのため、既に登録されている船名と重複するものは登録できません。特に人気のある名前や、英語で短く覚えやすい名称は重複が起こりやすく、オーナーは創造的かつ独自性のある名前を考える必要があります。
文字種・文字数の制限
船名には、使用できる文字種や文字数の制限もあります。英数字以外の特殊記号や、過度に長い名前は登録が認められない場合があります。国によってルールが微妙に異なるため、登録前に確認することが不可欠です。

船名は、なんでも良いわけではない。
船名はオーナーの美学や哲学を映し出す重要な要素であると同時に、法的・国際的な枠組みに基づいた「社会的責任」の一部でもあります。
船名を決める際には、自由な発想と規則の理解が不可欠です。オーナーの想いやブランド戦略を反映しつつ、国際ルールや社会的マナーを尊重することで、船名は単なる文字以上の意味を持つ存在になります。
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