スーパーヨットの名前にはルールがある? 船名の国際規則と表示場所

スーパーヨットの船名学|Superyacht Nameology# ― 名は体を表す。海の上の美意識と規範 ―

スーパーヨットの魅力のひとつは、その優雅な外観だけでなく、船名にもあります。しかし、船名は単なる飾りではなく、国際的な規則に基づいて表示されなければなりません。

船名は、SOLAS(国際海上人命安全条約)、UNCLOS(国連海洋法条約)、およびIMO(国際海事機関)の規定により、船名は船尾および両舷に明瞭に表示することが義務”付けられ、登録港も船尾に併記される。また登録国ごとに、使用可能な文字種や文字数、同名回避などの制限がある。

これがネット上でよく見かける情報の全てかもしれません。けれども、地中海で目にするスーパーヨットの中には、一目では読み取れない船名やアラビア語表記のものも少なくありません。表面的な規則だけでなく、その背後にあるオーナーの意図や哲学にも目を向ける必要があります。


写真は、イタリアのベネッティ社が2017年に建造した、プライベート所有の67mスーパーヨット「SEASENSE」です。「海(Sea)との感覚・つながり(Sense)」を意図しており、オーナーの海への愛着や、海上でのライフスタイルとの一体感を象徴し、内装や外観デザインには、快適性とラグジュアリーを両立させるモダンなコンセプトが反映されています。


写真は、カタールのタミーム首長が所有する123mスーパーヨット「アル・ルサイル(Al Lusail)」、2017年にドイツのルーセン社が建造。カタール船籍でドーハ港に登録されており、プライベートヨットとして使用されていますが、カタール領海外も航行するため、大きなアラビア語表記の上に「Al Lusail」と英語も併記されています。

命名の由来について、ルーセン社は公式に「ルサイル市にちなんで名付けた」と発表しています。ルサイル市は近年、大規模なマリーナや商業施設、住宅開発が進む都市であり、このヨットの名前には、自国の発展と未来への希望にかける国家元首の想いが込められていると考えられます。

船名は安全や識別のための規則に従うだけでなく、オーナーの哲学やブランドを映す存在

スーパーヨットの船名には、ただの文字以上のストーリーが隠されています。


スーパーヨットの船名学|Superyacht Nameology ― 名は体を表す。海の上の美意識と規範 ― 本シリーズの記事へ以下からアクセスできます。

  • ♯2美しさと安全性を両立!スーパーヨットの船名デザイン
  • ♯3ASAHIからSAGASUまで──スーパーヨットに宿る日本的美意識
  • ♯4船名の自由と制約―スーパーヨットにおける注意点
  • ♯5世界の富裕層が選ぶこだわり船名一覧
Yuky

イタリアのスーパーヨットビルダー勤務。培った知識や情報をアウトプットすることで、誰かを幸せにできるという信念の下、当サイトで執筆中。

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